Neumann関数の漸近展開

漸近展開ってばまあ級数展開みたいなものなのですが、級数展開よりは縛りは緩いです。変数がでかいときに積分形で表されてる関数がどういう挙動を示すかを調べるものです。小さいときも使えます。
そして関数の挙動を調べるものなので、収束性はあんまし気にしません。所謂、「至るところで」というのはあんまし気にしないで展開します。この辺は収束半径の縛りつきの展開と似たところがあるかと。あとはΓ関数の仲間みたいので良く使います。Γ関数は、
  \Gamma (x)=\Bigint_0^{\infty}e^tt^{x-1}dt
みたいな形をしてます。
で、Bessel方程式から出てくる積分方程式の解もΓ関数に似てるので漸近展開しようと思えば出来ます。ということで、それを考えます。
Bessel方程式は、積分形だと、
  H_0(z)=\Bigint_0^{\infty}\frac{e^{-z\xi}dz}{\sqrt{1+\xi^2}} +i\Bigint_0^1\frac{e^{-iz\eta}d\eta}{\sqrt{1-\eta^2}}
になります。
Neumann関数はこれの実部を取ったものなので、それをとって、
  \xi=\sinh u \\ \eta =\cos\theta
の変数変換を使うと、
  Y_0(z)=\Bigint_0^{\infty}e^{-z\sinh u}du+\Bigint_0^{\frac{1}{2}\pi}\sin (\cos\theta)d\theta
になります。
これのうち前の項について、eu=vの変換を施すと、
  Y_0(z)=\Bigint_1^{\infty}du\frac{e^{-\frac{1}{2}z\left(v+\frac{1}{v}\right)}}{v}
になります。
ここで、積分区間でvは有限の値を取る一方でzは小さいので、z/v=O(ε2)で、他よりも小さいので、これについて展開します。こうするのを漸近展開というようです。
  \Bigint_1^{\infty}\frac{e^{-\frac{1}{2}z\left(v+\frac{1}{v}\right)}dv}{v}\\= \Bigint_1^{\infty}\frac{e^{-\frac{1}{2}zv}dv}{v}\left\{1-\frac{z}{2v}+ \frac{1}{2!}\left(\frac{z}{2v}\right)^2+\cdots\right\} \\=\Bigint_z^{\infty}dw\frac{e^{-w}}{w}\left(1-\frac{z}{2w}\right)\\ =\log z+\Bigint_r^{\infty}dwe^{-w}\log w
とかなって対数関数が出てきます。
この手の関数のその他の0近傍での漸近解は全部0になるので、実質的にBessel方程式の0近傍での解は対数関数ということになります。このことは、波動方程式
  \phi_{rr}+\frac{\phi_r}{r}=\frac{1}{c^2}\phi_{tt}
で、振動する中心近傍では擾乱がほとんど無限大の速度で伝播することに対応します。当然短い波長の擾乱は有限に見える速度で伝播するわけですが、それも一番卓越する振動に比べればカスという風に考えます。で、波速cが無限大の場合は上の方程式の右辺が0になって、結局方程式はLaplace方程式になって、そのときの解が対数関数になってBessel方程式の漸近解と一致します。また擾乱が無限大の速さで伝播することは振動の波長が十分に長いことに対応し、波動方程式を時間についてLaplace変換して得られるHelmholtz方程式、
  \phi_{rr}+\frac{\phi_r}{r}+k^2\phi=0
について、波長Lはk=λ/2πLであることから、波長が無限に長いのはk=0に相当します。そのときもまた方程式はLaplace方程式になって、n=0のモードについてはやっぱり対数関数が解になります。
あとはまあその他にポリガンマ関数とか出てくるんですが、それは華麗にスルーする感じで。