飯豊山について

山岳信仰について

飯豊山は、福島県山形県新潟県の県境にある山で、古来から山岳信仰の山として扱われてきたらしい。
名前の通り、五穀豊穣を祈願する山らしい。信仰の対象であると同時に、通過儀礼(イニシエーション)の山としてもあって、福島県側の喜多方市の方ではその昔は18歳になると飯豊山へ登って、無事登れると一人前として扱われ、それ以降町内会で議決権を得られるとか、地域社会では大人として扱われるとか。で、失敗したらどうなるとかはおっかなくてちょっと聞けない。
そして、飯豊山へ登るにあたっては、飯豊山へ登る子供らと、村の長老が神社の社で1週間誰一人として口をきかないで過ごして、メシは外から差し入れをしてもらって過ごし、1週間経ったら、無言で山を登って、無言で下ってくるらしい。当然、どの岩場を通ったかでも序列ができるとか、なんかもう色々と今の世の中と比べても大人になることの意義が濃い気がする。今じゃ成人式がそれにあたるんだろうけど、ディズニーランドで成人式とか、野次を飛ばすバカとかとは大した違いである。これは切合から飯豊本山への稜線で会った地元のおっさんに教えてもらった話なのだけれど、聞いててなんかビビった。
ちなみにWikipediaによると、飯豊山登山は15歳までと書いてあるけど、地元のおっさんは18歳っていってて、聞き間違いか、何かかはまあよくわからない。ちなみに磐梯山通過儀礼に使われる山で、こっちは16歳で、あの辺の山は大概そういうしきたりがあるらしい。今となってはスキー場ができたり、道路ができたりしてあんましありがたみがないけれど、昔はそういう場所だったのだなあとなんとなく分る。
また、切合小屋(きりあわせ)から飯豊山へ向かう稜線上に姥権現(うばごんげん)というお社があって、そこは安産の神様で、子供が生まれるときにお参りして、子供が育つようにお参りして、そうこうしてるあいだに親が亡くなってしまうので、親がちゃんと往生できるようにお参りする家内安全の神様(権現様なので、神様という言い方が妥当かは知らない)で、飯豊山にはそんなのがちらほらあるとか。結局飯豊本山の飯豊山神社と姥権現しか見つけられなかったけれど。
蛇足ながら、世界に山岳信仰があるのは日本をはじめとする東アジアと中央アジア、「アブラハムの宗教の流れを汲む宗教信徒全般の居住地(旧約聖書におけるシナイ山十戒)」らしい。で、山岳信仰の中で山を敬いつつ、山に登るのは日本だけとか、何か面白い(wikipedia:山岳信仰)。
あと地元の人は飯豊本山とか、本山とかいうらしい。まあ飯豊山って言ってたけど。これは「地元の人」のサンプル数の違いかもしれない。
また、喜多方市飯豊山へ向かう北方(きたかた)だからとか、色々と地元に影響を与えている山である(喜多方駅前の看板より)。喜多方はラーメンが有名だけれど、福島県側の代表的な登山口の山都駅(喜多方駅から磐越西線で一駅)は蕎麦が有名で、喜多方でラーメン食って、山都で蕎麦食って、飯豊山の麓で温泉入って帰るのが代表的な観光ルートで、老け込んだらそんな所もいいかもって思う。

虻がやたらと多い

麓の喜多方市川入の集落からこのかた、下山の小国町の飯豊山荘までずーっと虻ばっかで、やったらと虻に食われた。これまで北アルプス南アルプス奥多摩もほとんど虫がいなくて、たまに大山で見るくらいだったのが、飯豊山では山にいる間ずっと虻に苛まれます。虻がいなくなるとブヨがいたりして、正に昆虫天国。
で、虻はあったかいところにたかる習性があるらしく、バスやタクシー降りてすぐとか、まさに虻まみれ。川入の集落からキャンプ場までの道すがらだけで20発くらい食われた。あまりにも虻が五月蝿いので、途中ザックを投げ捨てて走り回ったりしたけど、全く無駄。意味なしおちゃんだった。
これもひとえにこれまで山で虫にあったことがなかったので、半袖のTシャツにハーフパンツで来たのがまずかった。
梅花皮山荘のおっさんがいうには2000mくらいは虫が過ごしやすいところだから、虫が多いらしい。そして東北の山は全般的に虫が多いらしい。寒いし、緯度が高いから虫いねーと思ったらそうでもないらしい。あと、飯豊山はお花畑が多いので、そこに蜂やら多いのかも。

オーバービュー

お花畑が多くて、北の方にあるので、高度が低くても雪が残ってたりする。山容は遠目にはとても穏やかで、最高峰の大日岳すら2000m台なのだけれど、飯豊連峰の稜線に出るまでの斜面がどこもすげー急。
特に地蔵岳辺りが根性を試されるような、国内最凶の急登らしい。登りはいいけど、下りで緩いルートを選べないので帰りが最強につらい。もうね、小国へ降りるときにはほぼ泣きながら下ったね。冗談でなく。
しかも麓からの高低差がそれなりにあるので、北アルプスの登山口1200mから、初日2500mみたいなのとあんまし変わらない。飯豊山だと大体どこも登山口が400mでとっかかりの小屋が1500mから1800mくらい。鬼。しかもそこで急登なので酸素がそこそこあって高山病のリスクは少ないのを除けば北アルプスほどはキツくないって言える程度。
そして、山容が穏やかだからといって、登りでなめてるとたまにそこそこの岩場があったりしてダルい。岩場の一つ一つは危険という訳ではないけれど、数が多いので、ザックがでかいと体力を削られる。まあ室内でボルダーとかして練習してればちょろい難易度のものではある。

小屋について

小屋は全ての小屋が避難小屋扱いで、切合小屋だけメシが食える。ので、「中高年の登山者」の方々は切合までしかこないっぽい。そこから奥は少なくとも自炊になる。
テン場は切合はやっぱ広いだけで、三国と本山小屋はテン場なしで、梅花皮と御西は適当なところに張る感じ。切合のテン場からの景観はいいのだけれど、小屋泊まりの「中高年の登山者」の方々がテン場からの景色がいいとかいって入れ替わり立ち替わりどかどか入ってきて五月蝿かった。余談ながら、福島県側から登って飯豊本山を超えて御西の方へ行ってしまえば小屋の便が悪くなるので人がほとんどいなくなります。たまに根性のある「中高年の登山者」と、昔から山登ってる中高年の登山者の人らと、普通の登山者がいる程度。

アクセス

福島県側は磐越西線山都駅からバスで川入行きで1時間。朝の9時頃と、13時頃。夏だけ営業。で、山都駅からタクシーでも川入り行けて、ちょっと交渉したら閑散期は4kで川入りまで行けるっぽい。
で、磐越西線は郡山-会津若松間はそこそこ本数が出てるものの、そこから先はガクッと本数が減る。郡山起点で、会津若松、喜多方、山都の順で止まるのだけど、喜多方から先は1時間に1本しかねー。ちなみに喜多方から川入りまではタクシーで10k。一人だとダメージでかいです。小屋泊まり2連荘と思えばまあ分らなくない。
山形県側からは米坂線小国駅からバスで1時間で飯豊山荘につく。
今回は下山のときに使ったのだけど、最終バスが飯豊山荘で15時45分。確か700円。
また、こっちの米坂線も本数が少ない。まあ山のあたりの電車なんてこんなもんだけど。
それぞれの山へのアクセスのバスについては1つ前の日記(http://d.hatena.ne.jp/S-ili/20100802)をご参照。