安定/不安定

ある流れ場Ψがあるとする。
そしてそれを暗黙裡に線型方程式の解空間であると期待する。別に非線形でもいいんだけど、そうするとえれー面倒臭いので、やっぱ線形がいいなあと思い、せめて摂動展開でもするかといってなんだかんだで線形であることを期待する。その解が譬えparadoxicalでも当面は良いとしてみる。
そこで何からの外場があるとしてその外力をデルタ関数で表すとする。
そういう特例的な場合の解をGreen関数Gとして定義する。要するに解に対する写像がLで与えられてるときに、Green関数Gは
  \scr{L}[G(x,t)]=\delta (x)\delta (t)\\ \scr{L}[\psi(x,t)]=Const.
である。
このような流れ場の解は(たとえ線形でも)大概得られない(ことがとても多い)ので、とっても時間が経って、擾乱δのソースから十分に離れた場所での流れの様子がどうであるかを考えることで流れ場ψが安定か不安定かを議論する(のが定石だ)。
畢竟厳密解を求めるのは無理なので、そういう場合にはGreen関数がどう振舞うかで安定不安定を考える。
一般的に擾乱を与えてすぐの時刻では流れ場はとても乱れてると予想されて、そんなときに安定だ何だと考えてもあれなので、普通は時間が十分にたったときに安定かどうか、つまりGreen関数が発散するか収束するかを考える。発散すれば不安定で、収束すれば安定である。がしかし、安定なんて(どーせ減衰するだけだから)数学的には扱っても面白くないので、(工学的にも重要だし)不安定を普通は考える。
  \lim_{t\to\infty}G(x,t)=\infty \hspace{20mm} ^{\exists}\frac{x}{t}=Const.
ここでx/tっていうのはx/t=cである波速で決められる位相の波である。こういう場合の不安定を線形不安定という。ただ名づけられているだけの話だが。
ということで、不安定な場合について主に興味があるので、次に不安定の分類をする。
普通不安定っていうのは(直感的に、人間の都合で)振動で表される。
振動の振幅が発散すれば不安定だと感じる。
何があっても原点に波が残る強烈な不安定、もしくは不安定を起こしやすい媒質、若しくは緩い流れがあるとする。そのような十分に時間が経っても原点で振動が残ってるというのは何が何でも不安定であるということで絶対不安定と呼ばれる。
で、これを上の不安定の表式に当てはめると
  \lim_{t\to\infty}G(x,t)=\infty \hspace{20mm} \frac{x}{t}=0
となる。そんな滅茶苦茶な不安定に波数も周波数もへったくれもないし、射線*1も原点に沿って時間発展*2を眺めるというものになる。
今度、これを若干緩めの流れの場合に考えると、
流れている場合には波が流れに乗って下流に流下して目の前から(見え)なくなってしまうことがある。流速の早い川の水面に石ころを投げて波面をみようとしても*3波が下のほうに流れていってしまうことがある。そして擾乱を与えた地点には十分時間が経ったときに何の痕跡も残らない。これが移流不安定と呼ばれる不安定性である。
石ころを投げて大分時間が経つまで目の前の水面から波が過ぎ去らないことがある。でも、十分じっくり待てば静かになる。そういう場合もある。
そういうときに擾乱がどうなったかというと、下に流されてなくなったので、今度は目の前では安定だが、それ以外の場所では知らないということで、そういう移流型の不安定の場合には
  \lim_{t\to\infty}G(x,t)=0 \hspace{20mm} \frac{x}{t}=0
となる。
これらが安定不安定の解析の主なやり方である。(別のやり方もあるけど)
で、これらの判別をどうするかというと、それは微分方程式に含まれていることが期待される粘性係数や表面張力係数や波速やなにやらの兼ね合いで決まるのである。

*1:英語ではrayです。日本語訳すると、「光線」です。なので、すぺしゆむこうせんは、"Specium Ray"です。きっと。

*2:時間発展と経時変化だったら絶対「時間発展」って呼ぶほうが格好いいよなあ。

*3:普通は表面の変形が激しすぎて、外場による擾乱なんて見えないことが多いが、思考実験として