境界層の発達し具合

ひょんなことから境界層の絡む話を研究でやることになりまして、教科書を読んで復習してるところです。
境界層方程式って運動方程式の摂動展開したもんだと思ってたんだが、流速についての摂動展開ではなくて、どうやら速度勾配についての摂動展開のようだ。
どっちかというと数学的な摂動よりも、物理的な次元解析をもとに現象論から項を落とすことを試みてる感じ。
二次元直交座標系での非圧縮流体の定常状態での運動方程式と質量保存側は、
  u\frac{\partial u}{\partial x}+v\frac{\partial u}{\partial y}=-\frac{1}{\rho}\frac{\partial P}{\partial x}+\nu\(\frac{\partial^2u}{\partial x^2}+\frac{\partial^2u}{\partial y^2}\)\\u\frac{\partial v}{\partial x}+v\frac{\partial v}{\partial y}=-\frac{1}{\rho}\frac{\partial P}{\partial y}+\nu\(\frac{\partial^2v}{\partial x^2}+\frac{\partial^2v}{\partial y^2}\)\\\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{\partial v}{\partial y}=0
で、このときに運動量がでかいと粘性項が無視できるという近似が境界層方程式らしい。
要するに今方程式は変数(u,v)について二階の方程式だが、せめて非線形でもこれが一階になれば粘性流体について解いたことになるとしたいらしい。
個人的には粘性なんて考えてもなーんも面白くないとおもうんだが、やっぱPrandtleとかBlasiusが現役で粘性流体についての近似がStokes近似とOseen近似くらいしかなかった時代にはこういう移流項まで解いた方程式の解っていうのは新鮮だったんだろうなあ。きっと。
っつーことで、境界層方程式を導出するための主な仮定は、
  \nu\triangle\vec{u}\to 0 \hspace{10mm}\text{at. }Re\to\infty
である。っつーかReynolds数の定義、Re=UL/νからもそうなることが分かる。
がしかし、ここでいきなりν->0とかすると運動方程式は二階の方程式であるNavier-Stokesから一階のEuler方程式になって、粘性流体の境界条件である粘着条件が解を求める過程で余ってしまうので、何とか粘着条件を使いつつ、でも粘性をなるべく無視した方程式を作れないかと考えたのが境界層方程式である。ようだ。
で、主流からのズレだけを摂動成分にした普通の摂動法を使うと粘性項が全部消えるか丸ごと残るから、もうちょっと敏感な摂動を与える。要するに長さスケールを境界層厚さδと境界層が発達するときの代表長さlの二つを準備することで考える。そして、Reは代表長さlで与える。っつーことで、運動方程式と質量保存の両方での次元解析を行う。
  \underbrace{\frac{\partial u}{\partial x}}_{O\(\frac{U}{l}\)}+\underbrace{\frac{\partial v}{\partial y}}_{O\(\frac{V}{\delta}\)}=0
ここでy方向流速Vのオーダーについて、こいつはちょっと邪魔臭いんで、V〜Uδ/lとしてみる。この次から。
  \underbrace{u\frac{\partial u}{\partial x}}_{O\(\frac{U^2}{l}\)}+\underbrace{v\frac{\partial u}{\partial y}}_{O\(\frac{U\delta}{l}\frac{U}{l}\)=O\(\frac{U^2}{\delta}\)}=-\frac{1}{\rho}\frac{\partial P}{\partial x}+\underbrace{\nu\frac{\partial^2u}{\partial x^2}}_{O\(\nu\frac{U}{l^2}\)=O\(\frac{1}{Re}\frac{U^2}{l}\)}+\underbrace{\nu\frac{\partial^2u}{\partial y^2}}_{O\(\nu\frac{U}{\delta^2}\)}
ここで、Re->∞で、1/Re->0なので、粘性項のx成分が0になる。多分これが境界層方程式の核心部分だと思う。その次の項は別段怪しげなオーダーではなく、こいつの存在で方程式が二階のままでいてくれているのである。
  \underbrace{u\frac{\partial v}{\partial x}}_{0\(\frac{U^2\delta}{l^2}\)}+\underbrace{v\frac{\partial v}{\partial y}}_{o\(\frac{U^2\delta}{l^2}\)}=-\frac{1}{\rho}\frac{\partial P}{\partial y}+\underbrace{\nu\frac{\partial^2v}{\partial x^2}}_{o\(\frac{1}{Re}\frac{U^2\delta}{l^2}\)}+\underbrace{\nu\frac{\partial^2v}{\partial y^2}}_{O\(\nu\frac{U\delta}{l\delta^2}\)=o\(\frac{1}{Re}\frac{U^2}{l\delta}\)}
ここで、o(hoge)は問答無用で無視しまくる。また、境界層厚さδも分子に出てきた時点で無視。
こうやって無視しまくると、境界層方程式*1
  u\frac{\partial u}{\partial x}+v\frac{\partial u}{\partial y}=-\frac{1}{\rho}\frac{\partial P}{\partial x}+\nu\frac{\partial^2u}{\partial y^2}\\\frac{\partial P}{\partial y}=0\\\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{\partial v}{\partial y}=0
が出てくる。
で、境界層の厚さは結局
  \delta\sim O\(\frac{l}{\sqrt{Re}\)
になる。
うーん微妙だ。これだと代表長さを無限大に取ると境界層厚さも無限大に発散してしまうではないか...それではいけないんですよ、それでは。
ということで、他の文献も当たってみよう。
っつーかこんなことよりとっとと不安定性の計算を終わらせろと小..(ry

*1:Boudary-Layer eq.