流体屋の大きさの感覚

物理でも数学でも、色んな仮定がある訳です。Newtonの第二法則からなる運動方程式は物体の運動を物凄い勢いで単純化したモデルな訳でして、そこに空気の抵抗による散逸とかは無い訳です。何か流体力学のことを悪し様に言う人は、「落ち葉の軌跡一つ流体力学じゃ碌すっぽ解けない」とか言います。そんなのおめー解ける訳ねーんですよ。だって落ち葉の形って複雑だしぃー。渦点群の運動はカオティックだしぃー。そんなのは神様だけが知っているのです(byうちのボス)。ということで実は世の中には解けない問題が沢山あります。
そして、Newtonの運動方程式から、波の運動を波動方程式として導き出すことが出来るのですが、これも波の振幅が物凄く小さい、所謂、「微小」と言われるときだけ成り立つものだったりします。
そして微小というのはまた、振り子の中心からちょっとだけ離れた所みたいなのも意味したりします。
高校の物理でやるような、振り子の振動の周期が糸の長さだかのルートに比例するだとかいうのも、振動の振れ幅、振幅が無限に小さいときにだけ成立します。


じゃあそこそこの振幅のときはどうなるかというと、非線形振動の方程式を解かないといけなくて、その場合は解に楕円関数とか出てくることになるのですよ。そうなると初等関数だけで色んな振動に関する関係式を記述するのが難しくなります。まあなんだか良く分かんないかもしれませんが、要するに高校レベルの知識じゃどうにもなんねーってことです。
この様に実は流体力学にしろ、なんにしろ簡単に解けるものは実は少なかったりします。


じゃあどういうときに簡単に解けて、どういうときには難しくなるんだっていうのを考えると、運動がすっごい小さくて、っつーかもう殆ど動いてねーんじゃねっていうときは高校生が習うようなのでも解けます。こういうときの大きさのスケールを、「微小」と言います。もうね、限りなく0に近いくらいの勢い。例えばその大きさスケールをεにすると、1<有限」と言います。ので、有限とつくときはもう嫌だ的な何かがあったりします。こういうときに人は計算機に頼る訳ですね。いやー技術の進歩って素敵ですね。因にこの場合の大きさのスケールは、1〜O(ε)とかです。まあどーでもいいんっすけどー。
そして、有限とか微小とかの他に、無限というのもあります。
まあ振幅が無限だと糸がブッ千切れて重りがどっか飛んでっちゃうんで、今度は静電気とか磁石のことを考えます。
まあ磁石を下敷きの下に置いて、その上に砂鉄を乗せると砂鉄が磁石に引きつけられて集まってきます。そして下敷きを磁石から遠ざけると砂鉄は磁場の支配から逃れてバラけます。こういう風に、砂鉄とか磁石を構成する粒子達の大きさ(そりゃあもうすっげー小さいんでしょうよ)から比べて十分に大きい場合を無限遠とか、無限とか言います。
確かに人間の大きさから見れば高々数cm位で磁石の影響が無くなっちゃう訳で、そんなの小さいじゃんとか思う訳ですが、磁石とか砂鉄からしたらそれは無限に遠いいとなる訳です。逆に言うと、無限に遠い所に持ってくと磁石の影響から逃れられる、磁石の影響を無視することが出来るということにもなります。


ということで以上をまとめると、よく物理に出てくるような長さのイメージというのは、

  • 微小
    • この位なら楽勝で解けるぜ。でも実際にはそんな運動小さすぎて見えんがな。それでも第一近似としては何とか誤摩化して使えるかもなー。
  • 有限
    • こんな複雑なの解けないようわーんヽ( ´Д`)ノみたいな感じ。そしてこれを扱う場合には悲壮な決意と並々ならぬ努力と計算機(プログラミング)についての知識か、摂動法という特殊で、物凄い忍耐力が要求される作業に耐えうる精神力が必要だったりします。でもこのくらいの所やらないと誰も相手にしてくれないっす。
  • 無限遠
    • ここまできたら色んな邪魔なものが無くなるみたいな感じ。例えばここまでくれば五月蝿い音も聞こえないし、脇の下でゴシゴシした下敷きに髪の毛が引っ張られることは無いぜみたいなの。ある種心の逃げ場。無限遠では成り立つしぃーとか言ってみたりする。それでも大事な何かを忘れてる気がするような場所。

まあ世間様にとってはどーでもよく、日常生活には果てしなく役に立たない知識ですが、理系の脳味噌の中は大概こんな感じです。いや、俺だけかもしれないけど。
特に有限っていうのは実生活だと、「これだけしかないじゃん」みたいな感じで小さいイメージがあると思うんですが、俺にとっては十分でかいです。