水からの伝言を信じないで下さいという件について

水伝はまあ一部の研究者の中ではまた電波飛ばしてる馬鹿が居るぜやれやれみたいな感じで見られています。
学習院の田崎先生がそれについての丁寧なドキュメントを書かれていて、結構見られているようです。

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/fs/
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/halJ.htm

物理の先生のようです。
それについて、反響として、「だったらおめーが反証を示す実験をしろや」とか、「そんな学者向け(理科の出来る人)向けの上品な言葉で書いたって下々にゃわかんねーんだよ」みたいなのがあったりなんかしました。何つーかこういうのを見ると研究者と普通の人の間の認識の違いがあるっつーか、研究者の中での常識が世間の常識とは違うのだなあと思ったりなんかして。大体研究者も給料をもらってる身であって、何が楽しくてそんな取るに足らねーくだらねーインチキ科学の判例を示す実験をしなきゃいけねーんだと。金(=業績)にならないことをやる暇や脳味噌は幾ら研究者が自由人と謂えどもありません。
それについてまた田崎先生が丁寧な解説をつけられています。これについてはこっちの世界の事情も踏まえて書かれています。

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/fs/md/exp2.html

水からの伝言に限らず、怪しい実験結果をもとに学会で発表とかして金儲けのたねにしてる人が数年周期で現れたり、それに留まらず、学者自身も怪しげなトピックに飛びついてしまう事例もあったりします。ことに水関係はそういうのが多いですね。一時期はポリウォーターとかいうのが物理化学の一部であったりしました。水の分子や、分子群の構造を顕微鏡で観測することが出来ればそういうことを言い出すDQNとかは減るんでしょうがね。やっぱ身近なんだけど、観測も難しいし、素性も良く分かってないあたりが魑魅魍魎共が潜り込んで一発あててやろうという風に思わせる何かがあるのでしょう。ちょっとはてブあたりで騒がれたこの件について研究者の端くれとして書いてみます。
それでその手のものの多くが何が問題かというと、1)、ちゃんとした実験をしてない2)、査読のある雑誌に掲載されてる訳ではないということからガセをもとに情報だけが一人歩きすることになります。
以下に簡単に上に挙げた2つを説明します。

ちゃんとした実験

要するに自分の観測したい物が何かを示して、それを測ってるかということです。
例えば10から20程度の間のデータを取りたいのに0から100刻みで1000までの目盛りしかないような計測器で測ってないかとか、測る対象は毎回同じものかとか、同じことを同じ条件で他の人がやっても前と同じような結果が出るかということです。Aという場所でやって上手くいって、Bという場所でやったら無理だったとかいうのは話になりません。そういう場合はAとBの環境の違いとかを考察する必要があります。

査読付きの雑誌

研究の成果というのは学術雑誌に掲載されます。NatureとかScienceは有名ですね。
そういうのに掲載されるための条件が、

  1. そもそも書かれてることに信憑性があるか
  2. 新規性はあるか
  3. 学術論文を書くときの作法に則っているか

です。
決してお金を積めば載せられたり、出せば載る訳ではなく、その論文に価値があるか、ちゃんとした実験をしてるか、理論的に間違ってないかが吟味されて計算の判断が下されます。
この時点で大概のとんでもねー学説は一蹴されます。がしかし、何とか学会年会とかの大規模な学会になると査読がなくても発表が出来たり何かして、本来はフィルターに掛けられて永遠に日の目を浴びることはないだろうDQNなものが世に出てしまったりすることもあります。あ、因に査読付きの雑誌に何報論文が掲載されたかが研究者の業績になります。
研究成果の捏造とかの件もそうですが、この手のものは多くは当事者の良心に依ってる所が大きい訳です。要するに基本的に研究して成果を発表する人は捏造なんてしないし、ちゃんとした科学の技法に則って研究をしてる、だろうという発想です。なのでそれを逆手に取って嘘書いちゃったり、水からの伝言のように科学の技法に則ってないものまで出ちゃったりなんかします。
科学の範囲が広がって、携わる人が増えた現代に於いて未だに研究者の良心に多くを期待している今の慣習が妥当かどうかは分かりませんが、今後も捏造騒ぎやインチキ科学の出現が後を絶たなければそう遠からず査読無しで発表できる大規模な学会の年会とか総会や、小規模な内輪の研究会なんていう牧歌的なものもなくなってしまうのかもしれません。

水からの伝言について

これについてはもう常識的に考えておかしいの丸出しな訳で、皆様はご自身の身につけて来られた常識で判断して頂いて構わないかと。案外日本の理科教育も中学くらいまではしっかりしてたりするので、そこまでの知識で考えておかしいものはおかしいのです。大体中学の教科書を書き換えるような研究上の発見がなされたら大々的に報道されるしな。僕の常識を覆すような事実が自らの伝言にはある訳ですが、そういうのに釣られるのは嘘を嘘と見抜けない人たちな訳で。若しくは自分の中での常識を覆したいという願望を持ってるとか。それか水からの伝言を使って自分や他人を洗脳したい人とか、そういう人が引っ掛かるんじゃないかと思われます。
あとは水からの伝言については一般人は騙せても研究者は騙せる程手が込んでなかったという点が挙げられます。
これまでに騒がれたけど実はそんなもんありやしねーよという事例は研究してる本人が信じ込んで、それらしい専門知識を駆使して周りを巻き込んで壮大なる研究費と時間の無駄を繰り広げたというものが多いです。勿論水からの伝言の人も本人は信じてるんでしょうが、学会を巻き込んで信憑性を質そうとモチベートできなかった点がまだまだインチキ科学としてはヒヨッコのレベルです。

誰がこいつらを止めるのか

基本的に研究することで金を貰ってる連中は査読付きの雑誌に論文を掲載することができない、つまり業績が上がらないと商売上がったりになって失業しちゃったりすることもあります。ので、それがおっかないからか何なのか知りませんが、研究や(一部の方々はデータの捏造)に励みます。勿論好きでやってる人が大多数な訳ですがね。
というような環境の中で、それって胡散臭くね?といわれちゃうような研究をする研究者というのはそうそう居るもんじゃありません。ということで、自ずと怪しげなことを言う奴は爪弾きにされるし、食いっ逸れるというシステムが動くことでそれなりにインチキの入り込む隙が少なくなったりします。
以上は科学に携わることで飯を食ってる人についてなのですが、これが科学を使って怪しい金儲けをしようという連中は変わってきます。
そういう奴らは有り体に言えば科学の分野での業績なんて挙げる必要はない訳です。で、あとは査読のない学会で発表とかして、あたかもその学会で認められたかのような箔をつけることでそういう事情を知らない人たちをだまくらかすことができます。そいつらは査読のある雑誌で相手にされなくても、顧客に相手にされれば良い訳で、幾ら科学の世界でボロカスにいわれてもそれがカモにバレなければ良いっていうことで幾らでもくだらねー成果を生産して潮時が来たらケツまくってバッくれるということをするわけです。
で、じゃあこいつらがここまで色んな方面からの話題を呼ぶようになってしまった責任は誰にあるかというと、それは僕には良く分かりません。
査読のない学会で発表をしてる件について、その学会の主催者はあくまで悪意を持ってっていうか、箔をつけるために使われてることを想定はしてない訳です。そんなザルみてーなことやってるからつけ込まれるというのは確かにあるんですが。じゃあそういう風説を流布するのに使われたんだからお前らが必死こいて火消ししろよと言われたらそれもどうかという話になる訳で。世間一般じゃそういう風に思われてるんでしょうがね。何とも難しい問題ですね。