文科省の中の人「高学歴ワーキングプアは自分自身と社会の責任」

余り発言の一部を切り抜いてそこだけを指摘してなっとらんとか言うのは好きではないのだけれど、余剰博士のネタについて、

文科省の今泉柔剛・大学改革推進室長は「博士の増加は間違いではなかった。責任は彼ら自身や大学院教育、産業界・社会などすべてにある」。ただ「文科省も関係者への働きかけが不十分だったかもしれない」と認めた。
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200901180087.html

文科省の中の人が発言したらしいです。
責任は自身と大学院教育と、産業界と社会のあるらしいです。主に。オマケで文科省の働きかけが不十分だったらしいです。
そもそも最初から大学院拡充化の方法が上手くなかったと言わない辺りは役人無謬説が巷間ささやかれるのもさもありなんといったところです。だからおめーら嫌われるんだよ。とかいうのはまた別の話。
大体出口もないのに増やしてどうするってことです。


一応ながら文科省のエロい人の目論見では産業界に於ける博士の学位を持ってる人間の数を欧米のレベルまで引き上げたかったらしいです。実際にビジネスの世界で、R&Dとかしてると学位とってないと欧米では一人前の技術者と見なされなくて、修士くらいだとテクニシャンに相当するものだと思われるらしいです。
ので、そういうのと対等に交渉なりするなりする為に博士を沢山作りたかったらしいです。
というのが1つで、もう一つは専門性の高い人材を産業界に放り出して研究開発のポテンシャルをあげたいとかそういうことらしいです。それが即ち国力と彼らがいうものらしいです。国力が博士の数で決まるんだったら世話ねーっつーの。

文科省によると、日本の人口当たりの大学院生の数は欧米の約半分。永山賀久・国立大学法人支援課長は「博士は国際的にみれば圧倒的に足りない。就職できない人がいるから減らすというのは、国全体としてみれば間違いだ」と言い切る。
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200901180087.html

だからって頭数増やしゃ良いてもんでもねーだろっつーの。
そもそも企業の要求する人材とマッチングした人材を育成してこなかったという大学側の問題と。新卒一括採用で、あとは自前で育てますという日本企業の研究開発に於けるスタンスが著しく接合しなかったところが問題な訳で、そこを解消する方法を考えないまま博士の数を増やしても受け入れ先は持て余すしって話だわな。
じゃあ企業もとらないしってなったら大学とか国研とかが取るんだろうけど、折からの行政改革で大学の職員数は減るし、国研もそもそも文科省の管轄でないので人事権がないのでどうしょうもないって話だわな。そもそも文科省の話を経産省なり国交省が聞くかっつー話です。農水は分からんけど。
そういうことで民間企業にも他の省庁にも交渉したところで色よい返事が来なさそうなのに定員だけ増やしてみたところでしょうもないのです。その辺の見極めを十分にしないまま無駄に博士(なんとか)って名刺に書いてあるバカを世間に送り出したところで国力の低下は免れないでしょうねと。そもそも民間企業にも採用されない人はそこそこお勉強はできるのにフリーターとかする訳ですからね。とーたるの知的生産量ではそりゃ本来なら民間企業に就職して働いているのに比べたら下がるでしょうよ。
そういうことで、文科省単体でやるなら博士の定員を減らすか、もし他省庁や民間企業の強力や理解が得られるなら定員は若干減らして、方針をちょっと変えるで済むかもしれないですけど、ここまできて碌な総括もできないようなぱっぱらぱーのやることなんて誰も聞きやしないので定員減らすしかないんじゃないっすかね。
それでも博士課程在籍者が定員に満たないと予算減らすとかとんでもねーことやるバカ共だから結局どっちもしないんだろうけどな。


あと民間企業に身を置くものとしてコメントするならば、俺は大学院は工学部出身なのだけれど、往々にして民間企業の多くは基礎研究的なことはしてないことが多いです。うちはそう。
研究っぽいことをしてるのは余程金があってというのと、自前で全部作ろうという社風と伝統があるところしかやってないんじゃなかろうか。そもそも基礎研究なんて利益に対して極めてかしかしにくい形でしか影響しないので、リストラとかいったら真っ先にぶった切る訳ですよね。なので、そういうのは面倒だから自前ではしないことが多く、外注したりする訳です。
じゃあ基礎研究はしないですってなったら、開発なりになる訳だけど、その時点で各大学の書く研究室のホームページを見ても余り企業の役に立ちそうな研究をしてるところが見当たらないのです。主に基礎的過ぎてそれどうすんのって感じで、そんな研究なら俺がやった方がもっとマシなのが出て来るみたいな感じです。
そしたらそういうところで学位取った博士とか使いにくいよねってことです。基礎的な研究を研究部門に抱えてるところならいざ知らず、そういう殊勝な会社はそうそう世の中に多くないのです。しかも企業の中研なんていつ本体から切り離されるか分からないし、人もそうそう多く取ってないし、これまでの企業の採用活動に見られるような一括採用みたいなことは殆どしてない訳です。
なので今のような民間企業の研究基盤がかなり貧弱な状況では博士持ちなんて恐れ多くて使えないです。そういうことでお前らカイゼンばっかしてないで勉強ももうちょっとはしろということなんですが、中々そういう方向に舵を切るのも難しいのではないでしょうか。なまじそれでこれまでそこそこ上手くやってきてしまったので、叩き上げ体質みたいなのはそう簡単に変わるもんでもないです。